“性格を変える”ことよりも“性格を生かす”努力を -サバイバル時代の“悩み方”講座(2)

■「性格変えたい」と思うのは、人間として自然なこと

「こんな嫌な自分を変えられたら!」なんて思ったことはありませんか?

現代精神医学では、“性格改造ができる”ということについて「半分は正しくて、半分は間違っている」と考えるようになってきています。心のストレスを強く抱えるときは、どうやら、性格と環境のミスマッチが大きな原因であることがわかってきているのです。

では、はたして環境が思いどおりになるものでしょうか? 実際、人間の生い立ちなんて相当不平等だし、その後の生活環境だってそうそう思いどおりに改善できないのが世の常ですよね。職場でもプライベートでも、あまりにありのままの自分(の性格)でいられないことが重なれば、人は心身をむしばまれたり、生きていることさえつらくなったりしてしまうものです。

もちろん、性格と環境のミスマッチへの対処は、はじめはみんな試みます。なんとか問題そのものを解決できないか? 前向きになって乗り越えられないか? 人間関係で乗りきれないだろうか? という考え方をしていくわけです。でも、そもそもさんざん悩んでも解決しないからこそ悩んでいるわけで、したり顔で親や彼氏からわかりきったアドバイスをされたってねぇ…。「そんなことわかっているけど、できないからつらいんでしょっ!?」などと、とっくに頑張っている事実さえ理解されていないことに、悲しくなったりするわけです。で、ますますつらくなる。そうすると結果的に「自分の性格が変わってくれたら、どんなに生きやすくなることか」と考えてしまうのは、人間として自然なプロセスなわけです。

■性格の約半分は、生まれたときに決まっている

でもね、厳しいようですけど、性格って簡単には変わらないんです。例えば「生まれたときに性格の約半分は、体質のように決まっている」と、行動遺伝学の見地からもわかってきています。

先天的要因が強い性格には「嫌なことに目を背けて先送りする」「熱しやすく冷めやすい」「コツコツとやるべきことを、きちんとできるかどうか」「他人のために役に立ちたいと思えるかどうか」などがあります。だから、大人になって仕事がいつも期限ギリギリになってしまうタイプの人は、小さいころの夏休みの宿題もなかなかやらないで期限ギリギリに提出していたりするものです。

こうした性格は、簡単には変わらないのです(もちろん、だからこそ注意して先送りしないようにするなど、行動を努力で変えられる部分もあるのですけどね)。いっぽうで「すぐ他人のせいにしない」とか、「人間関係に気を配れるかどうか」などの性格は、後天的要因が大きいと言われています。

■“性格を変える”ことよりも“性格を生かす”努力を

性格改造作戦はうまくいかないことが多いのです。半分の遺伝的なものは簡単には変わらないし、後天的なものだって長い時間をかけてつくられているわけで…これもすぐには変わらない。一生をかけて苦労しながら人格を磨くことは大事だし、それは可能ですけれど…。精神科医の立場としては「まず性格を変えちゃえ!」という無茶を言うよりも、自分の性格を生かす努力をして、自分らしくてもいいんだと思える状況をつくる地道な作業のほうがはるかに現実的だし、そういうプロセスなしにラクして人格なんて磨けませんよ!と思うのです。

かつては精神科治療の現場で「10年以上かけて性格を変えよう」という治療が盛んになされましたが、いまはその医学的効果の低さが問題視さえされています。性格に悩んでいるといったって、幸せを感じている瞬間には悩んでいたことも忘れていますよね? 物事がうまくいかない、思いどおりにいかないときに「こんな性格変えたい!」と考えるわけですから。

結局、大事なのは自分の性格を生かしきれていないこと…という“対処力”の問題に行きつくわけです。逆境であれば多かれ少なかれ性格なんてだれでも悪くなるし、状況を打開できたときは、だれだって性格のいいところがあらわれやすいことは、いままでの経験から理解できる人も多いでしょう。

「性格を変えたい」くらい、うまくいってないときのつらい気持ちは痛いほどわかりますし、女性に多い、かわいい考え方だとも思います。だけど、「性格を変えたい」と考えるだけで終わらないことが、次のステップに到達するための大事なポイントなのです。【シュシュ 4/9発売号 連載「精神科医・最上悠が教える『サバイバル時代の“悩み方”講座』」第2回より抜粋】

文=最上悠(もがみ ゆう)…精神科医。臨床での治療に携わりつつ、メンタルケアをはじめとした精神療法の研究を行なう。著書は「薬を使わずに『うつ』を治す本」ほか多数。

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