大沢たかおインタビュー(2)[動画あり・09年4月]

「30代は悩める10年でした」
  • 「30代は悩める10年でした」

(第1回より続く)

―大沢さん自身の生き方は、才蔵というより、自由な五右衛門に近いですか?

「いや、五右衛門って、結局最後は逃げて生きてるんですよ。問題をわかりながら、結局解決せずに、自分が楽しいように生きている。才蔵は、欲もあって、問題意識から逃れられずに、かといって叫ぼうとせず問題を“含み”ながら生きている。…僕は、最終的にはひっくり返しちゃったほうがいいんじゃない?っていうタイプなんで、どっちでもないかも」

―“革命家”ですね。

「イライラしてきちゃうタイプなんで(笑)。特にこれからの時代は、もう何かを“含んだ”まま進んでいくっていうのは難しいと思っているんです。例えば俳優とか作品ということで言えば、映画だからこう、とかテレビだからこう、という時代ではもうない。本も携帯もパソコンも映画もテレビも、全部同じところからのスタートだと思う。自分自身も、『映画をいっぱいやってる俳優さん』なんていう立場に安住していてはダメ。これからはいち仕事として、本当にゼロの状態で、世界中の全員と同じ土俵、同じスタートラインに立っての勝負になると思ってるんです。経験も、有名無名も関係なく」

―どうしてそう思うようになったんですか。

「30代は、ずっと悩んでたんです。仕事をやればやるほど『違うよなぁ…』、どんだけ一生懸命やっても『なんか違う…』の繰り返しだった。でも、悩んでいるうちに、原因は自分の弱さや甘さだと気づいた。どこかに問題があるとわかってるのにそのまま放置して進んでいたり、身に着いたテクニックでその場をしのいでいたり。で、年齢とともに、うかうかしてはいられないと思いはじめて。自分はいったいなんのために俳優をやっているのか? いい家に住むためじゃないし、いい車に乗るためでもないし、みんなにキャーキャー言われるためでもない。ぜんぜんそんなんじゃない。じゃあなんのためにやってんの? 自分の感じるまま思うままに表現して、何かを伝えたいからだ。だったら、全部“やりきって”仕事しないなら、もう、俳優・大沢たかおなんて必要ないじゃんって思っちゃった。自分がいまのままだったら必要ない。やめちゃえば?って。2年くらい前からそう考えていて、去年の終わりぐらいで仕事が一段落したんで、ことし(09年)は夏まで仕事やめよう、映画も撮るの絶対やめようと思ったんです。で、ここのところずーっと普通に暮らしながら、毎日毎日考えていて、きっとこれで間違いないっていう“確信”が近づいてきた。いままで10何年続いてきた悶々の意味が、ようやくわかってきた感じなんです」

―視界が変わった。

「はい、あのー、もっと、すごく、自分って、力あるんだよなって思ったんです。力がぜんぜん出てないって気づいた。こう言っちゃうとアレなんですけど。いずれ人は死ぬわけだから、ちょっと可能性使おうよって思った。そんなに可能性あんのに、なんで使わないの? なんで使わなかったの?って。そこまでポテンシャルあるのに、何やってんのキミ、みたいな…」

―これまで、セーブしてたってことですか。

「してないんですよ。まったくしてなかったんだけど、悩みどころが違っていた。敵はもっとおっきかった。いや、敵って言い方はよくないけど、自分のすべきこと、やりとげなきゃいけないことを、見誤っていた。これまでやってきたことに後悔はないんですが、やっぱり仕事って、方向が“ズレる”んですね。例えばデビュー後10年間は、1年目の力、エネルギーがぜんぜん出せていない。それはバカみたいに賢くなって、ラクに行く方法を見つけちゃってるからで。そうすると、逆に自分の可能性を閉ざしちゃうことになる。簡単に言うと、ですけど。2年くらい前からそう気づきはじめて、大沢たかおはそれじゃダメだと思った。キミにはもっと大きな課題があるんじゃないか。この仕事をやるうえで、違うテーマがあるんじゃないかって。着てるよろいを全部脱いで、裸にならないとって。長くやってきたことだから簡単には脱げないんだけど、信じた方向に進んで一発で終わるのと、いまのまま20年生き残るのと、どっちがいいかっていったら、俺、自分のあるべき姿は一発で終わるほうだなと思っちゃった。細々と10年20年続けてもしょうがない。後悔のないように、裸になって本来自分がやりたいようにやろうといま思ってるんです」

(第3回に続く)【シュシュ編集部/滝本志野】

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