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パティシエ辻口博啓の“DNAに語りかける”ショコラ

東京ウォーカー(全国版) 2015年2月4日 16時44分 配信

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1月21日、世界最大級のチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」が東京で幕を開けた。その後、2月15日(日)まで全国6都市で開催され、世界トップクラスのショコラティエたちが、日本中をチョコレート一色に染め上げる。

その中でも特に注目を集める、気鋭のショコラティエにインタビューを実施!業界を牽引する彼らが胸に抱く、ショコラ作りの流儀を探る。

<辻口博啓(ル ショコラ ドゥ アッシュ)>

“テレビでよく見る有名パティシエ”というイメージがあるかもしれない。実際、マスコミへの対応も実に器用にこなす。

しかし取材中、彼が声を詰まらせた場面があった。話が東日本大震災の被災地支援に及んだ時だ。彼は今でも、ある商品の売り上げの一部を寄付し続けている。テレビからは伝わらない本当の辻口博啓を見た気がした。

――パリのサロン・デュ・ショコラには、2度目の出展となりましたね。パティシエである辻口さんが、ショコラティエとして新たな挑戦をした思いを聞かせてください。

「ル ショコラドゥ アッシュを初めて手掛けたのは2003年のことです。オープン当初は、日本のショコラムーブメントがようやく本格化してきた時代。そこをスタート地点として、日本に真のショコラ文化を浸透させたい、世界に日本人として誇れるショコラを紹介し、認めてもらいたい。そんな思いを強く持ってやってきました。その中で、サロン・デュ・ショコラは一つの大きな目標であり、勝負の場でもありました。パティシエとしてスタートした僕が、ショコラティエの世界も極めたいと考えたのは、自分が“モノづくり”を追求していくうえで、カカオそのものから始まる深い世界に強く惹かれたからです。それは、パティシエというアプローチだけにとどまっていては、決して見ることのない世界です」

――辻口さんのショコラは、2013年に引き続きC.C.C(クラブ・デ・クロクール・ド・ショコラ)の品評会で金賞という高い評価を受けました。

「日本のショコラティエとして、世界に向けてどんな発信ができるのか。僕は、常にそれを考えています。和素材を使うだけなら他の人でもできる。自分ならではの新しい提案をしたいという強い思いがあったので、それが世界に評価されてうれしいです」

――2013年は“細胞で感じるショコラ”をテーマに、ナノ・テクノロジーを取り入れた「Nano Chocolat(ナノショコラ)」が話題になりましたよね。とても斬新でした。

「ありがとうございます。『ナノショコラ』は、カカオニブをナノ化のテクノロジーを用いて極限まで微細な粒子にする新しいチョコレート原料です。クーベルチュールに加えることで、カカオの香りや味わいが際立ちます。2013年は、ナノ化したパイナップルピュレを使ったボンボン・ショコラも発表しました。ナノ化は粒子を小さくするだけでなく、粒形の異なるものを加えることになるため、なめらかさを増す効果があります。また、粒子が微細なので素材の成分や栄養素が細胞に吸収されやすくなる。だから“細胞に訴えかける”味わいを生み出すことができるのです」

――今年のテーマは「人間のDNAに語りかけるショコラ」ですね。

「“DNAに語りかける”なんて言うと大げさに聞こえるかもしれませんが、郷愁性や人間の原点回帰といったことを、ショコラで表現したいと考えたんです。例えば、日本人はコンブダシを飲むと懐かしい気持ちになることがありますよね。それはただ慣れ親しんでいるからではなく、DNAに組み込まれているからに違いない。僕は日頃からそう感じていました。では、コンブダシの特徴であるグルタミン酸の旨味をボンボン・ショコラに加えたらどうだろうと考えました。そこで、『ナノショコラ』の技術を融合させた『DNAショコラ』の発想が生まれたのです」

――話を聞いているだけでワクワクしてきますね。

「面白いでしょう?今回作ったのは『うま味ノワール』『和歌山のオレンジ』『ゴマおはぎ』『赤紫蘇』の4種類です。たとえば『うま味ノワール』は、『ナノショコラ』を加えたクーベルチュールと、コンブの旨味の組み合わせ。富士山の天然水に真コンブを浸して旨味を抽出し、そのエキスをガナッシュに加えることで、食べ終わった後にほのかな旨味の余韻が残るようにしました。また、『和歌山のオレンジ』は、自然な酸味と甘味を持つ和歌山県産オレンジの果汁に、ショウガを加えたパート・ド・フリュイ(果物のゼリー)、旨味と『ナノショコラ』を加えたガナッシュを組み合わせ、口当たりや味わい、香りの変化を楽しんでいただきます」

――「ゴマおはぎ」や「赤紫蘇」というのも、ユニークな発想ですね。

「これらも、僕の中では“懐かしさ”を感じさせる食材です。単なる“和のショコラ”ではなく、“日本人としての原点”を誇れるショコラを世界中の人に食べていただきたいと思いました。和食が世界無形文化遺産になったこともあり、今回のサロン・デュ・ショコラのテーマともぴったりじゃないかなと」

――2013年に話題を集めた、ショコラサプリメントも新しい商品が登場するのですね。

「医食同源はこれからの最大のテーマです。スイーツは人を幸せにするもので、人のためにならなければ作る意味がない。食べて健康になることも、その延長線上です。2013年からご紹介している『アッシュショコラ サプリメント』は、順天堂大学の小林弘幸教授にご協力いただき、カカオポリフェノールの抗酸化力と、緑茶に含まれるリラックス成分のテアニンを融合させることで、サプリメント効果を打ち出した新感覚のショコラです。今年の新作は、糖質コントロールチョコレート『ショコラ ユニバース』。これは、より多くの人たちにおいしいチョコレートを食べる喜びを味わってほしくて試行錯誤の末に完成しました。まず、自然界に存在する甘味料(エリスリトール)を使って糖質を大幅にカット。砂糖を一切使わずに、自然な甘さとなめらかな口どけと、カカオ本来の深みのある味わいを実現しています」

――まさに、医食同源のショコラですね。

「これなら、罪悪感なく食べられるでしょう(笑)?ショコラの可能性は無限なので、やってみたいことがたくさんあります。目下、挑戦中なのはオリジナルカカオを作ること。自分なりの個性を表現したカカオを作ることは、ショコラを手掛けるうえで大きな夢ですから」

【東京ウォーカー/記事提供=サロン・デュ・ショコラ オフィシャル・ムック2015】

※記事の内容は、「サロン・デュ・ショコラ オフィシャル・ムック2015」から一部抜粋、再構成したものです

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【辻口博啓】
1967年、石川県で和菓子店の長男として生まれる。東京都内のフランス菓子店や、フランス・ラングドック地方のパティスリー・ベルタンなどで修業を積む。数々の世界大会に日本代表として出場し優勝。現在はパティスリー、モンサンクレールや、チョコレート専門店のル ショコラ ドゥ アッシュをはじめ、コンセプトの異なる12種類のブランドを展開する。

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