トップ選手が移籍!フィギュアスケート熱が高まる新潟県

新潟アサヒアレックスアイスアリーナを本拠地とする今井遥。大会終了後の氷上にて
  • 新潟アサヒアレックスアイスアリーナを本拠地とする今井遥。大会終了後の氷上にて

去る4月2日から5日まで、新潟アサヒアレックスアイスアリーナ(新潟市)において、北日本フィギュアスケート競技大会が開催された。44回目の開催となる伝統ある大会だが、新潟県での開催は今回が初。過去一度も、新潟県には通年営業のリンクが存在しなかった。

長年の努力の末、通年リンクの建設に成功し、大会誘致と選手の育成、強化を図る新潟県スケート連盟の取り組みについて紹介したい。新潟県スケート連盟・フィギュア部長の伝井達さんに話を聞いた。

秋田県出身で、大学から新潟を拠点にするようになった伝井さんは、大学卒業後、セミプロとして選手を指導する傍ら、新潟県スケート連盟の運営にも携わってきた。しかし12年前、シーズン営業のリンク、新潟アイスリンクが閉鎖され、新潟市内からスケートリンクがなくなってしまった。

「何とかしなければならないと、新潟県スケート連盟だけでなく、新潟県アイスホッケー連盟とも協力して運動を開始。『新潟市にスケートリンクを作る会』を立ち上げて署名活動を進めました」。

2年間で14万5千人の署名を集め、市議会に提出。全会一致で受理されたが、そこから実際にスケートリンクの建設にこぎつけるまでにはさらに5年を要したそうだ。こうして新潟県のスケート関係者にとって、悲願の通年営業リンクが完成した。

新潟県のフィギュアスケート競技人口が少なかったことを如実に表すエピソードがある。かつて本田瑞希という男子シングルの選手がいた。新潟県出身で、東洋大学スケート部へと進み、全日本選手権にも出場した選手だ。

その彼が国体に出場しようとした時、困った事態に。国体は、2名1組でないと参加資格がない。新潟県には成年男子のカテゴリーの選手は本田瑞希しかいなかった。当時30代後半だった伝井さんが、教え子のために一肌脱いだのだ。選手兼監督として国体に出場した伝井さんのエピソードは、関係者、ファンの間でも話題となった。

悲願の通年リンクを手に入れ、新潟県のフィギュアスケート人口は急激に増加している。2014年秋の全日本ジュニア選手権を始め、今まで開催できなかった競技会を積極的に誘致し、新潟県連盟の存在感は日増しに大きくなっている。そして、新潟県の関係者も予想していなかった効果も表れた。国際大会への出場経験も豊富なトップ選手、今井遥が新潟県へと移籍してきたのだ。今井遥に新潟県へと移籍した経緯について聞いた。

「元々、アメリカのデトロイトでホームステイをしながら練習していましたが、体調を崩してしまい、デトロイトでの生活を続けられなくなり、東京に戻ったのですが、東京ではリンクの貸切がなかなか取れずに苦労していました。そんな折、新潟に新しいリンクができるという話が舞い込み、お誘いを受けたこともあって新潟に移籍しました。今は新潟がほぼメイン、時々東京で練習する生活をしています。道上留美子先生の都合のつく時には新潟にも来ていただいています」。

今回で44回を数える北日本大会。本田武史、田村岳斗、荒川静香、鈴木明子、羽生結弦など、優勝者には錚々たるメンバーがそろう。その一人として、今井遥も名を連ねることとなった。

「今回はホームリンクでの開催ですし、新潟のスケート界を盛り上げたいとの気持ちもあって参加しました。各地からファンも観に来てくれて、大会の成功に協力できたことがうれしいです」。

来季の活躍を期する彼女にとって、この大会での演技はプログラムのテストも兼ねていたようだ。

「ショートプログラムは来季も『マラゲーニャ』を使い続けますが、ステップの部分は一から作り直しました。来季はトリプルフリップ+トリプルトゥループ に変更する予定です。この試合でジャンプの入り方を確認しました」。

さらにフリープログラムについては、「サン・プルーの『ピアノ協奏曲』を使います。昨季使う予定で作ったプログラムなんです。技の構成が変わったために振付も変更が必要になり、3月にデトロイトで振付をやり直してきました。結果、曲はそのままですが、新作のように仕上がりました」。

フリープログラムで予定している構成は高難度だ。セカンドトリプルのコンビネーションを2回、フリップにも2回挑み、昨季は回避していたルッツも取り入れる。再び世界の上位に挑むための攻めの構成だ。

「まだまだ仕上がっていませんが、お披露目としていいテストができました。この経験を半年後に生かせるようにしたいです」。秋からの新シーズン、美しく仕上がったサン・プルーの「ピアノ協奏曲」を披露する今井遥の姿が目に浮かぶ。

通年リンクの完成を機に、一気にフィギュアスケート熱が高まっている新潟県、その勢いは決して昨日今日に始まった一過性のものではなく、長年の地道な活動の末に花開いたものだ。今後の展開を楽しみながら見守りたい。【東京ウォーカー/取材・文=中村康一(Image Works)】

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