“街プロ”オススメの「住んでよかった街」Part1

“街プロ”(=街のプロ)に、“住みたい街”の条件や“住んでよかった街”を本音で語ってもらうインタビュー企画。

第1弾は、不動産・住宅情報サイト「HOME’S」を運営する株式会社ネクストの社内シンクタンク、HOME’S総研所長・島原万丈さん。長年住宅と向き合ってきた島原さんが、“心地よい”と感じる街とは?

荻窪駅南口の商店街。かつては別荘地だった歴史ある街だ
  • 荻窪駅南口の商店街。かつては別荘地だった歴史ある街だ

歩いて楽しい街は、体が喜んでいる証拠

いい本屋、いいカフェ、いい飲み屋。この3つがあることが住みたい街の条件です。この“いい”というのは個人的な感覚なので言葉にするのは難しいのですが、街を歩いていて楽しいとか、寄り道したいと思うのは、体が喜んでいる証拠だと思っています。

実際に、僕がこれまで住んだ街のなかでよかったのは、藤沢の鵠沼駅。本屋、カフェ、飲み屋も充実している藤沢駅から歩けて、海にも歩いて行けます。ある日、江ノ電の車窓から海に向かう若い人たちを見て、「今日は会社を休もう」と電車を降りたこともあります(笑)。利便性よりも、のんびりした空気感に惹かれるんですね。

学生時代に住んでいた荻窪もそう。独特な中央線文化が根付いているけれど、阿佐ケ谷ほどサブカル色が強くはなくてバランスがいい街です。今住んでいる馬込は、荏原、中延、旗の台あたりが徒歩の生活圏で、駅の近くに地元の常連が集まるいいバーもあります。利便性の割に家賃は安めなのも魅力です。

荻窪駅北口は、駅直結のルミネなど商業施設や商店街も充実。またバスの路線が多いのが特徴で、西武線や京王線に乗り継げる
  • 荻窪駅北口は、駅直結のルミネなど商業施設や商店街も充実。またバスの路線が多いのが特徴で、西武線や京王線に乗り継げる

どの街にも共通しているのは、雑多で多様なところ。遊びにいく街とは違って住む街は肩の力を抜ける方がいいし、よりセンシュアス(官能的=身体で経験する街と人との関係性)であることが重要だと考えています。

センシュアス・シティとは?

“センシュアス”とは“官能的”という意味。その街でどんな心地よい体験ができるか、生身の体が喜ぶアクティビティができるか、街の魅力をはかる新しいものさしです。長年住宅に関わり続けてきましたが、好きだった武蔵小山や新橋みたいな街が再開発で変貌していく様子を目の当たりにして、自分が心地よいと感じる街と日本が推し進めている都市開発や、メディアが発表する住みたい街ランキングにギャップを感じるようになっていきました。

今の日本は、わかりやすく本音と建前でいうと、建前だけで都市計画や都市評価がなされてしまっている。でも、僕たちは建前だけで生きているわけではないですよね。昼だけではなく夜も活動しているし、どちらかといえば夜の方がお金を使っている。時間帯でいえば昼と夜、体でいえば上半身と下半身(笑)、本音と建前の両方を見なければ決しておもしろい街にはならないし、どの街も新しくて便利で機能的だけれど、個性が漂白されたつまらない街になってしまいます。

そこで、“身体性”と“関係性”という2つの大きなコンセプトを軸に、全国134の都市を対象に、「共同体に帰属している」「匿名性がある」「ロマンスがある」など8つの指標を調査しました。それが、2015年に発表した「Sensuous City[官能都市]~身体で経験する都市センシュアス・シティ・ランキング~」です(1位・東京都文京区 2位・大阪府大阪市北区 3位・東京都武蔵野市ほか)。

文京区の“谷根千”エリアの路地。大通りから1本路地に入ると隠れた人気店がそこかしこにある
  • 文京区の“谷根千”エリアの路地。大通りから1本路地に入ると隠れた人気店がそこかしこにある

住みやすいのは多様性のある街

その結果、雑多性と多様性が混在しているコンパクトな都市が住みやすい街として評価されている印象を受けました。大きな居酒屋チェーンもあれば横丁もある、商業施設や飲食店だけではなくて、その奥には住宅や商店、町工場もある。人が住む、働く、遊ぶところがごちゃ混ぜになっているような街です。

例えば、1位の文京区がそうです。本郷あたりはもともと高級住宅地ですが、湯島の方まで下ると神社があって、その先に飲み屋があって、道を挟んでラブホテル街まである。つまり、本音と建前がごちゃ混ぜ。それに文京区は、坂や路地が多く景観が豊かなので歩いていて楽しい街。自動車ありきで作られた新しい街は上位にはあがってきません。

おそらく昔は、山や川などの地形を生かしながら人力で街を作っていったわけですから、街と人の目線が近かったはずなんです。簡単に言えば、人間の体や感覚に適合したヒューマンスケールで作られた街が住みやすい街だということだと思います。

これから引っ越す人へ

もしも次に引っ越すとしたら?難しいですが、個人的には五反田あたりでしょうか。渋谷、恵比寿、目黒ときて、次は五反田がくるんじゃないかと密かに思っているんですよ。20年くらい前は恵比寿も今ほど人気の街ではなかったですよね。どちらかというと代官山の方がおしゃれな街だった。それが、恵比寿ガーデンプレイスや代官山アドレスができた頃から、恵比寿駅近くにもだんだん個性的でいいお店が増えて、そのイメージが中目黒の方にまで降りてきて、目黒まで広がった。

そして次は、五反田なんじゃないかと。白金高輪方面と目黒川方面の2方向から、じわじわ来ると思います。実は今、ネット系のベンチャー企業が五反田周辺に集まってきているんです。西麻布よりも気楽に遊べますし、品川や羽田へのアクセスもいい。不動産価値の視点で見ても五反田エリアは注目です。

これから引っ越しを考えている人には、物件の条件よりも“好きな街”から家を選ぶことをおすすめします。街が好きであれば、家がちょっとくらい古かったり、駅から遠かったりしても暮らすのが楽しいですよね。最寄駅まで何分かかるかというのも大事ですけど、つまらない5分よりも楽しい10分を選んだ方がいいと思いませんか?

引っ越す予定のない人も、今住んでいる街のおもしろいところを積極的に見つけていくと、もっと街が好きになると思います。何もないと思っていた街にも案外発見があるものです。【東京ウォーカー】

HOME’S総研所長の島原万丈さん。13年に株式会社ネクストのHOME’S総研所長に就任し、消費者目線での調査研究に従事
  • HOME’S総研所長の島原万丈さん。13年に株式会社ネクストのHOME’S総研所長に就任し、消費者目線での調査研究に従事
■島原万丈さんの「住んでよかった街」BEST3
1位 鵠沼駅(神奈川県藤沢市)
「一番長く住んだ街です。いい意味でゆるくて好きでした。藤沢駅前には帰りにふらっと立ち寄れる飲み屋が充実していて、海に近くなるほど今度はカフェやレストランが増えていきます」

2位 荻窪駅(東京都杉並区)
「荻窪と高井戸の間くらいに住んでいました。西荻窪にはアンティークショップや雑貨店、レトロなカフェやケーキ屋がちょこちょこあって、吉祥寺にも近いのでよく遊びに行っていました」

3位 馬込駅(東京都大田区)
「徒歩圏内に人気商店街もあって、交通や買い物の利便性に優れています。五反田にも近い。それなのに家賃相場が安くて、コストパフォーマンスが抜群にいい街です」

■プロフィール
HOME’S総研所長
島原万丈さん
2015年、都市の魅力を測る新しい調査指標「センシュアス・シティ・ランキング」を発表。

1月20日発売の東京ウォーカー(2016年2月号)に「住んでよかった街」特集を掲載!
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