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「FF」で「ドラクエ」を“けちょんけちょん”にする気だった!坂口博信が過激発言

週刊ジョージア 2016年3月29日 7時02分 配信

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全世界でシリーズ累計1億本以上を売るRPG「ファイナルファンタジー」。その“生みの親”として知られるのが、当時スクウェア(現:スクウェア・エニックス)に所属していた坂口博信だ。世界的な人気タイトル制作の裏に隠された、“ほろ苦い”体験を2回に分けてお届け!後編では「FF1」の開発秘話を紹介!!

同僚に「売れるわけない」と見捨てられた初代FF

――初代FFは、開発メンバーを集めるのに相当苦労したとか。



当時の社長がディレクターを4人選んで、4チーム作ったんです。僕はそのディレクターの中の一人でした。

そして「ディレクターはゲームの企画案を、他の社員にプレゼンしなさい。他の人は“売れる”と思う企画のチームに自由に入りなさい」と。

僕は、その頃ドラクエがヒットしていたので、「ドラクエを“けちょんけちょん”にするRPGを作ろう!」と提案したところ…。

他のチームは20~30人くらいの希望者があったのに、僕のところにはたった2人しか来なかった(笑)。



――2人!?どうしてですか?



「RPGなんて売れるワケがないし、作ること自体も無謀だ」なんて意見でしたね。

ドラクエだけは売れていましたが、その頃のヒット作の多くはアクションゲームだったんです。

そしてファミコンカセットの容量の関係上、確かに制作自体もかなり難しかったので。



――“無謀な挑戦”だと思われてしまったんですね。



しかも、プレゼンでチームに入った社員のうち1人はすぐに退職してしまったので、実質1人しか社員は増えなかった。

その1人というのが渋谷(員子)さんという女性で、FF6までのドット絵を描くことになる人間です。

あと、僕とコンビを組んでいたプログラマーはプレゼン関係なく一緒に作ることが決まっていたので、その3人が初期の開発メンバーですね。



――坂口さん、渋谷さん、プログラマーさん。この3人で作れるんですか?



ムリですね。だから、そのチームでの最初の仕事はリクルートでした。アルバイトでもなんでもいいから、人を集めようと。

その募集で来たのが、FFのマスコットキャラ「チョコボ」を生み出す、グラフィックデザイナーの石井(浩一)なんです。



――のちに「聖剣伝説」シリーズのディレクターにもなる方ですね。



彼は黒い革ジャンに孔雀の羽みたいなのが付いた、チンピラ風のカッコで面接に来たんですよ。

そんな男が、「俺、絵が描けるんで雇ってくれませんか?」と持参したイラストを見ると、とてもカワイイ絵で(笑)。

最初は「ホントにお前が描いたの?ウソなんだろ?」って信用しませんでした。



――(笑)。



「SaGa」シリーズをディレクターとして立ち上げることになる河津(秋敏)も、このときにアルバイトで入ってくれました。

また、ずっとFFシリーズの作曲をしてもらっていた植松(伸夫)さんも、このときにスカウトしたんですよ。

彼は元々“知り合いの知り合い”で、作曲ができることは知ってたけど、まだプロというワケじゃなかったんです。



――おふたりとも、坂口さんが“発掘”されたと。今考えると、以降のスクウェアを支える中核メンバーが、坂口さんのチームに集まったんですね。その方々で完成まで?



途中からは、他のチームに所属していたメンバーも合流してくれたんですよ。「いいものができそうだ!」ということで。



――手応えはあったんですか?



はい。僕も他のスタッフも自信がありましたね。

だから、当初20万本の予定だった初回出荷本数を倍の40万本に増やすよう、経営陣にお願いたんですよ。



――経営陣は納得してくれましたか?



全然(笑)。

社長、副社長、営業のトップと僕で話し合ったんですが、まったく分かってもらえなかったので「ふざけんな!20万本なんてありえない!!40万本がムリなら今すぐやめる!」と言って押し通しました。



――すごいですね…。



今思うと、当時のスクウェアの体力を考えたらずいぶんムチャなことを言ったなと思うんですが、そのときは知ったこっちゃないですから(笑)。

おそらく、必死で資金を調達してくれたんでしょうね。



――そしてFF1は52万本※を売り上げ、見事に大ヒットを。

(※移植版は含めずファミコン版のみの本数)



発売当日は、近所の商店街にあるオモチャ屋さんをのぞきに行きましたね。

それで、FFが並んでいるのを見てニンマリしました(笑)。

20年以上勤めたスクウェアを退社

――その後FFはヒットし続け、ドラクエと並ぶ“ニ大RPG”と呼ばれるまでになりますが、坂口さんは2003年にスクウェアを退社されます。



約20年間、ずっとスクウェアでゲームを作り続けていたので、いったん自分自身を見つめ直してみようと思ったんです。



――結果的には、退社の約1年後に「ミストウォーカー」というゲーム制作会社を立ち上げることに。



一時は、まったく別の仕事をしようとも考えたんですけどね。

途中で、「関わってきた人たちの助けがあってこその自分だったんだな」と気付いたんです。

才能のある人と組まないと、何も前に進まないんですよね。

だから、もう一度社会に戻るなら人脈のあるゲーム業界じゃないと、何もできないかなって。

今は「TERRA BATTLE(テラバトル)」というスマホゲームの開発・運営をしているんですが、音楽はFFに続き植松さんだし、開発のメインメンバーも元スクウェアの人間なんです。



――“ユーザー”として関わってきたファンの中にも、坂口さんが作るゲームを待っていた方が多くいたのでは。



そうですね。久しぶりに作品を発表すると「待ってました!」と言ってくれる方もいて…。

本当にファンもスタッフも大事で、人生10年、20年かけてやってきた繋がりは大切にしないといけないんだなと。

これはスクウェアを退社してからの1年間があったからこそ、あらためて実感できたことですね。

RPGも人生も、失敗を繰り返してレベルアップしていくんじゃないでしょうか。

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坂口博信●(さかぐち・ひろのぶ)62年生まれ、茨城県出身。「ファイナルファンタジー」シリーズの生みの親として知られる。現在はゲーム制作会社「ミストウォーカー」の代表取締役社長。

構成/questroom inc. 撮影/宮腰まみこ

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