【中谷美紀さんインタビュー その2】中谷の初舞台「猟銃」が5年ぶりに再演

妻・みどり、愛人・彩子、愛人の娘・薔子(しょうこ)という、年齢も性格も立場も違う女性3人を中谷は1人で演じ分ける
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その1(http://news.walkerplus.com/article/75340/)の続き

Q:役替わりの瞬間や着物を着付けながら話すシーンなどの演出も。

役柄の変遷をすごく大事にされていて、とにかくトランジション、トランジションって、ずっとおっしゃっていたんです。変遷をどう見せるかで、この作品の力強さが変わってくると。

映像ですと24時間働き詰めのこともザラにあることで、舞台経験がなかったものですから、「ま、1時間半の舞台だから」と思っていたのですけれど、まぁこれが大変でして(笑)。呼吸、息継ぎのタイミングも難しかったですし、やはり着物の着付けをしながらセリフを述べるというのも。着物を着ながらということで、小道具の一切ないほかの役の時よりセリフのきっかけは覚えやすかったですけれど、鏡を見ないで着付けをすることがなかなか難しくて。それはまた今回も難関ではあります。

Q:水や小石の上を歩いたり、大変では?

お水は全然大変ではないです。私というよりスタッフの方が大変だと思います。石を敷き詰める準備にだいたい毎日2時間ぐらいかかりますので。特に2回公演の時は大変ですよね。スタッフの皆さんは、お客様を驚かせつつ引き込ませるセットデザイン、また照明を創ってくださったと思います。

あれ、実は見事に陰陽五行の木火土金水、全部が入っているんですよ。木は彩子の板(舞台の床板)、火は薔子の時に使うマッチ、土は石に、猟銃は金に当たりますよね。水は本当に水が張ってあるので、陰陽五行すべて入ったセットなんです。ジラールさんがそれはもう禅、禅ってミニマルな空間にこだわっていらっしゃいましたから。

Q:今回初めての再演ですね。

私自身の人生を本当に変えてくれたぐらいの大きな作品でした。自分の年齢とともに心のひだも増えたのか、読めば読むほど物語が深く味わえるようになってきたので、今このタイミングで再演できることをうれしく思っています。

Q:初舞台から2本の舞台を終えて学んだことは?

言葉をもう少し厳密に、大切に演じたいなと思えるようになったことと、共演者との関係性というか、舞台で生まれる感情というのを、もっともっと大切にしたいと思うようになりました。

初演の際は、とにかく自らが演じることに必死だったんですけれども、その後「ロスト・イン・ヨンカーズ」という作品で群像劇的な作品に携わらせていただいて。三谷幸喜さんには日本語を一言一言大切に述べるということなどを教えていただきました。あと、舞台の上では共演者の方々が、誰かの失敗を絶対に見逃さず、誰かが救ってくださるということも。また、「メアリー・ステュアート」では神野三鈴さんとご一緒させていただいて。たった2人で相手しか寄りどころがない状況で、決してお互いの動きを見逃さない、セリフを聞き逃さない、何があってもお互いに掬い取るということを教えていただきました。

ですから今度こそ、共演のロドリーグさんと、舞台上でお互いに目と目はほとんど合わないにしても、その関係性をもっと豊かに演じたいと思いました。

Q:再演に当たり、ジラールさんの新たな挑戦は?

より感情的な面でいろいろ試みをしてくださっていますね。今、裸電球1燈だけの暗がりの中で稽古をしていまして。自意識とか羞恥心とかいったものをはぎ取って、素の状態で演じられるような環境を作ってくださっています。

また、私自身はお客様に向かって演じているので、上演中は背後にいらっしゃるロドリーグ・プロトーさんのことを見ることができないんです。でも、お稽古中は対面でお稽古して、お互いの感情が作用し合い、お互いの気持ちがこもるように演出をしてくださっています。その気持ちを持って舞台に立ちなさい、ロドリーグを、穣介という男を常に意識しなさいと。その2人の関係性をもっともっと緻密に作るべきだったと、私自身も演出家のジラールさんも思っているので。

フィジカル・アクターのロドリーグさんは、本当にプロフェッショナルです。一言も声を発さないご出演にも関わらず、3時間前には劇場に入ってチベット僧侶の読経のようなヴォイストレーニングから始められるんです。筋トレして、体をほぐして、ようやく舞台に立たれる。ほんとに修行僧のような方なんですよ。

Q:前とは違った「猟銃」に?

きっと、感情面で、より深くなっているのではないかなと思います。舞台の中で「あなたは愛することを望みますか、もしくは愛されることを望みますか」という問いかけがあるのですが、劇場においでになる皆様にもご一緒に考えていただきたいなと思います。

Q:中谷さんご自身の答えは?

本来だったら、愛する人間でありたいと思いますけれども、そのためにはまずは自分が満たされないとならないなと思っているので、愛される方を選びたいと思います。

Q:仕事をする上で一番大切にされていることは何ですか?

舞台であれ映画であれ、媒体は問わず、自分の心が動くかどうかを最も大切にしています。なぜならば、自分の心が動いてないのに、人の心を動かすことは無理だと思っているので。直感で、心が動くか動かないか、それのみです。

■STAGE「猟銃」

●日時/5/7㊏18:00、8日㊐13:00、9日㊊13:00 

会場/ロームシアター京都 サウスホール

●日時/5/21㊏13:00・18:00、22日㊐13:00 

会場/兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

原作/井上靖  日本語台本監修/鴨下信一

演出/フランソワ・ジラール

出演/中谷美紀、ロドリーグ・プロトー

料金/¥8,500

問い合わせ/キョードーインフォメーション(0570・200・888)

取材・文=高橋晴代、撮影=大西二士男

なかたにみき●1976年、東京都生まれ。確かな演技と透明感のあるたたずまいで、多くのテレビドラマや映画で活躍中。2011年「猟銃」で初舞台後、13年「ロスト・イン・ヨンカーズ」、15年「メアリー・ステュアート」の舞台にも出演。4/15㊎からドラマ「私 結婚したいんじゃなくて、しないんです」(毎金22:00~、MBS)に主演

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