アカデミー賞作品賞『スポットライト 世紀のスクープ』の監督が舞台裏を激白!

『スポットライト 世紀のスクープ』のトム・マッカーシー監督を直撃
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並みいる強豪を抑え、第88アカデミー賞作品賞と脚本賞をW受賞した『スポットライト 世紀のスクープ』が、いよいよ4月15日(金)に公開される。世界中に衝撃を与えた、カトリック教会の神父による児童への性的虐待というセンセーショナルな題材を、骨太なアンサンブルドラマで放った本作。衝撃の実話に斬り込んだトム・マッカーシー監督にインタビューし、オスカー受賞の感想と、撮影秘話について聞いた。

この世紀の大事件をスクープしたのは、アメリカの新聞ボストン・グローブ紙の「スポットライト」というコーナーを担当する記者たちだ。事件を隠ぺいしてきた組織に立ち向かう記者たちを、マーク・ラファロ、マイケル・キートン、レイチェル・マクアダムスら実力派俳優たちが、見事に演じきった。

脚本は、マッカーシー監督率いるチームが、入念なリサーチをして書き上げたものだが、まさに、彼らの姿勢こそが、劇中の熱き「スポットライト」のチームと重なる。実際に、オスカー像を手にした時、どんな心境だったのか?

「うれしかったよ。ノミネートされた時点で可能性はあると思っていたが、期待してなかったからね。うまく言えないが幽体離脱したような気分だった。幼い頃からテレビで観ていたあの舞台に上がった時、今まで作ってきた作品と支えてくれた仲間たちの顔が走馬灯のように浮かんだよ。いろんな感情が一気に押し寄せ、とにかく感無量だった」。

授賞式では、家族や友人、撮影仲間と喜びを分かち合い、その意義を実感した。

「受賞したこと以上にうれしかったのは、この作品を通じて多くの問題提起ができたことだ。虐待の組織的隠ぺいや報道の精神、カトリック教会の実態、そして聖職者に性的虐待を受けて傷ついた人々についてだ。中でもジョー・クローリーとフィル・サヴィアノは、被害者の証言を集める作業に大きく関わってくれた。彼らに報いることができて本当にうれしい」。

リアルな感情を出すために、俳優陣も自らリサーチを重ねて役作りをしていった。

「彼ら俳優は、みんなプロフェッショナルだ。それぞれ下調べしてきてくれたから、私が細かく助ける必要はなかったよ。みんな、自分の役のモデルとなった人物に連絡を取り、できるかぎりいっしょにいる時間を過ごしてくれた。記者たちについては特にそうで、ボストンまで行って、自分が演じる記者のことをちゃんと知り、実際に仕事をしている環境に身を置いたりもした。それは、とても有意義な時間だったと思う」。

過剰にあおる熱血ドラマではなく、着々と真実を重ねていくドラマ構成が秀逸なのも、脚本作りの段階での綿密な取材が生かされているからだ。

「いちばんの課題は記者たちの心を開かせることだった。彼らは普段、質問する側の人間だから、質問されることを好まない。だから我々を信用して心を開いてもらうことが難しかった。ストーリーの事実関係だけを知れば良いというわけじゃなくて、その奥にある心の面で、どう感じていたのかというところまで知る必要があったから」。

それらは報道しがたい壮絶な内容で、自分たちが大切に思っている街や、その人々の話だったからこそ、かなり苦戦したと言う。

「彼ら自身が大きく衝撃を受けたトピックだからね。調査の最中は、彼らも自分たちがそこまでショックを受けていたとは気づいていなかったと思う。だから、仕事の話を聞くだけではなく、彼らには心を開いてもらう必要があった。それは、つらいことだったと思う」。

しかも、驚いたのは、監督自身がカトリック教徒だったという点だ。それも、本作を手がけた理由の1つだったのだろうか?また、描いていく上での葛藤はなかったのか?

「確かに、この作品を手がけようと思った理由の1つは、自分がカトリック信者として育ったことだ。カトリックという信仰、文化、そして人々について見識があると感じたから。私は、いまはもうカトリックではなくなったが、家族はまだ教会とのつながりが強いよ」。

だからこそ、プロジェクトに着手した時から、共感と理解を持って、この問題に取り組もうと心に決めたそうだ。

「僕はカトリックとして育ち、ボストンの学校に通い、当時のロウ枢機卿の自宅のあったレイクストリートから道を挟んだところに住んでいたこともある。そういう個人的な理解や見識が、きっとその世界を作り上げるのに役立つだろうと思った。このストーリーを世の中に伝える人物として、自分こそが最適の人間だと感じたんだと思う」。

『スポットライト 世紀のスクープ』がオスカーを勝ち取ったのは、トム・マッカーシー監督のただならぬ情熱と、それに突き動かされたキャストやスタッフ陣、モデルとなったボストン・グローブ紙の記者たちの熱い思いが集結したからこそだ。この真実のドラマを、是非、しっかりと目に焼き付けてほしい。【取材・文/山崎伸子】

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