「良作になる確信があった」渡辺謙×M・マコノヒーの『追憶の森』

『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』の名匠ガス・ヴァン・サントがメガホンをとった新作映画『追憶の森』が4月29日に公開。本作は、アカデミー俳優マシュー・マコノヒーと、日本を代表する国際派スター、渡辺謙がタッグを組んだ点でも注目されている。今回は、その渡辺にインタビューし、マシューとの共演について語ってもらった。

ガス・ヴァン・サント監督の新作映画『追憶の森』に出演する渡辺謙
  • ガス・ヴァン・サント監督の新作映画『追憶の森』に出演する渡辺謙

本作は、磁石が狂い、携帯電話も通じない富士山の樹海が舞台。運命的に出会った2人の男、アメリカ人のアーサー(マシュー・マコノヒー)と、タクミ(渡辺謙)が、本来の目的をよそに生き残ろうと奮闘する姿を描くミステリアスなドラマだ。死に場所を求めるアーサーと、妻子のもとへ帰ろうと出口を探して歩き回るタクミ、2人の間にちらつくさまざまな謎が絡み合い、見る者に衝撃と心に沁みる感動をもたらす。

渡辺は、この作品に惹かれた理由について「まず、ガス・ヴァン・サントが監督として手を上げてくれたこと」とコメント。「これは良い作品になるだろうと思いました」と、監督との仕事に魅力を感じたことを明かした。

そして、脚本を手にした際の気持ちについては「最初は、こういう死生観みたいなものにアメリカの人が興味を持つようになったんだな、と驚きました」と率直な感想を打ち明けつつ、自らの病を振り返り、「たまたま最近、胃がんを見つけていただいて。もう仕事はできるようになったんですけど、20代で感じた『人生には必ず終わりがあるんだ』という感覚が久方ぶりに出てきて。これは、人間が永遠に抱えている命題なんだということを再認識しました。この命題を皆さんにも再認識してもらうためには、こういう映画を作るということに意味があるんだなと感じました」。

共演者のマシューについては、「結構タイプが似ているなと」と、現場でのスタイルを回顧する。「経歴も年も違うんだけど、タイプ的に似ている俳優という気はします。準備はちゃんとするんだけど、現場では何も持たない状態で、捨て身で立っていくというのが。だからあまり構えずに、そこで起きること、感じることをどこまで忠実にやれるか、というのを2人で作っていけた気がします」とのこと。ちなみに、2人はクランクインの日に、樹海の中で監督から「アクション!」の声が掛かるまで、リハーサルや打ち合わせをせず、あえて顔を合わさないようにしていたそうだ。

作中では、タクミが傷ついた身体を引きずりながら登場するシーンが印象的だが、これについては「最初に観客や主人公のアーサーが衝撃を受ける姿でいなければいけなかった。あとは、ほっといたらこの人やばいんじゃないかなという雰囲気じゃないといけなかったんです。あそこは割と脚本に忠実に演じていまして、傷とか血とか、顔の色とか、洋服の汚れ具合とかは脚本に合わせて作っていきました」。

撮影は、精神的にも肉体的にも、思っていたよりハードだったそうだ。「脚本を読んだときはこんなに大変な仕事だと思わなくて。もっとサラッとしていると思っていたので予想外でしたね。日常の回転数は落としましたよ。回転数を上げちゃうとマインドが変わっちゃう気がして。撮影がない時間は誰とも会わずに部屋でジーッとしていましたね。嫁さんとも電話でしゃべったりせず、メールで済ませたりとかしていました」。

本作では、歌のシーンにも注目したい。「途中で僕が歌っている『天国への階段』は、もともとジーン・ケリーのミュージカルで歌われた曲。でも、翻訳したのは僕なんですよ。一応、韻を踏んで。『○○Day』というのを『○○で~』と訳したりとか。あそこを演じたあとに『次はどんな仕事をやるの?』って聞かれて、NYで『The King and I(王様と私)』をやるんだって言ったら、『え?ミュージカルやるんだ?え~!?』ってスタッフたちが。僕を馬鹿にしてるんじゃないのって(笑)」とニンマリ。観客は、その大胆な歌いっぷりに少々驚くかもしれない。

本人は、「花が咲くシーンは印象的だった」と、お気に入りのシーンを挙げる。「ちょっと哲学的な台詞が多かったんで、ややこしいっちゃ、ややこしい映画だったんですけど、あのシーンは印象的に仕上がっていましたね、幻想的で。哲学的な感覚もしっかり投影されていました。デザイナーがすごくかわいい花を作ってくれて、それも面白いなと思って見ていました」と思い返した。

演技力と存在感で映画界に確固たる地位を築いた渡辺謙とマシュー・マコノヒー。2人が生み出したケミストリーを、『追憶の森』でぜひ堪能してほしい。【取材・文/平井あゆみ】

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