キン肉マン「フェイスフラッシュ」の原理を科学的に考えてみた!

「キン肉マンは『フェイスフラッシュ』という技で、ドブ川をきれいにしたり、鉄の棒を曲げたりしていました。どうなっているのでしょう」という読者からのギモンに、我らが空想科学ラボ主任研究員の柳田理科雄がお答え!

マスクの下から不思議な光を出す人のイメージ
  • マスクの下から不思議な光を出す人のイメージ

P.N.ペンキ塗りたてさん、うれしい質問ありがとう!

おお、「フェイスフラッシュ」こそ、キン肉マンが歩んできた道のりを象徴する技である。

かつて週刊少年ジャンプで連載が始まったばかりの頃、『キン肉マン』は完全なギャグマンガだった。

主人公のキン肉マンは、怪獣と戦ったりしていたが、「ドジなヒーロー」と酷評されていた。

空も飛んでいたが、その手段はオナラだった。

そんなキン肉マンが、戦いを重ねるうちに、友情に厚く、正義の心を持ったヒーローになっていった。

そして、ついにはマスクを少し脱ぎかけただけで、その素顔からは清らかな光が放たれ、奇跡を起こせるようになる。

名づけて「フェイスフラッシュ」。

フェイスフラッシュの光が当たると……

ドブ川がきれいになる!

鉄製のシーソーが曲がる!

婚約者が顔に負った大ケガが治る!

投げられた花束から、死んだ仲間がよみがえる!

戦いで死なせた相手もよみがえる!

わーお、ミラクル!

まるで、神さまか仏さまみたいな行為ができるようになったわけで、キン肉マンは驚くほど気高く成長しちゃったのだ。

しかし、科学的に考えれば、どうなのか?

画面を見る限り、キン肉マンが発したのは清らかな光である。

光にそんなことができるのだろうか。

ここでは、質問にあるドブ川の浄化と、シーソーの湾曲を例に、フェイスフラッシュの力を考えてみよう。

ドブ川はきれいになるか?

キン肉マンが初めてフェイスフラッシュを放ったのは、まったくの偶然だった。

キン肉マンは、キン肉星大王の息子であること、戦いで実績を残したことなどから、次期大王に選出される。

お披露目の式典で、100人の超人の神は承認したが、5人の邪悪の神が異議を唱え、彼らが推薦する5人と戦い、勝った者が大王……という話になってしまう。

もちろん、キン肉マンは納得できず、式典会場を飛び出した。

そして、ヤケになったキン肉マンが橋の上からドブ川にマスクを脱ぎ捨てようとした、そのとき! 

キン肉マンの顔から光が放たれ、ドブ川は一瞬できれいな川になったのである!

光でドブ川がきれいになるとは、恐るべき現象だ。

だが、科学的に考えるなら、決して不思議ではない。

川には細菌が棲(す)んでおり、生物の死骸などの有機物を分解している。

細菌には、酸素を好む「好気性菌(こうきせいきん)」と、酸素を嫌う「嫌気性菌(けんきせいきん)」がいて、それぞれ有機物を次のように分解する。

好気性菌:完全に分解し、水や二酸化炭素などにする。

嫌気性菌:分解が不完全で、悪臭のあるガスとヘドロにする。

つまりドブ川とは、嫌気性菌が圧倒的に優勢な川なのだ。

そんなドブ川の水に酸素を供給すれば、好気性菌の活動が盛んになって、水はきれいになる。

事実、それを利用して、下水処理施設では汚水に大量の空気を吹き込んでいる。

では、ドブ川にフェイスフラッシュの光が当たるとどうなるか?

ドブ川には「藻(も)」などの植物プランクトンも棲んでいる。

これらはフェイスフラッシュの光でどんどん光合成を行い、仲間を増やしながら、どんどん酸素を作り出すだろう。

すると、好気性菌が勢力をグングン拡大して、ドブ川はきれいになる……!

フェイスフラッシュによるドブ川の浄化は、きわめて科学的な現象なのである。

その光は、太陽の29万倍!

もう一つの現象「シーソーの湾曲」は、王位継承サバイバルマッチで起こった。

戦いは団体戦で行われ、キン肉マンチームのテリ―マンは、敵チームのキング・ザ・100トンと対戦する。

この体重100tの超人は、鉄製のシーソーの片側にテリ―マンを乗せ、反対側でジャンプして、テリ―マンを天井に激突させようとした。

その刹那、キン肉マンはテリ―マン側のシーソーの腕にフェイスフラッシュ!

すると、シーソーの腕が上に向かってグニャリと曲がった。

この結果、テリ―マンの乗った台がキング・ザ・100トンのほうを向いたため、テリ―マンはキング・ザ・100トンに向かって飛ばされる。

この機を逃さず、フライング頭突き! 形勢を一気に逆転したのだった。

光で、鉄の棒が曲がることがあるのだろうか?

もちろん、ある。

真夏、車のボンネットが熱くなるのは、太陽の光で加熱されるからだ。

鉄は1536度で溶けるが、その前に900度を超えると軟らかくなる。

フェイスフラッシュの光が猛烈に強ければ、シーソーの腕が軟化して、曲がることもあるわけだ。

計算をシンプルにするために、ここではシーソーの腕を直径10cmの鉄棒に置き換えて考えよう。

また、シーソーの湾曲は瞬時に起きたので、0.1秒で900度に達したと仮定する。

その場合、フェイスフラッシュの光の強さは真夏の太陽の29万倍。

【写真を見る】これが「フェイスフラッシュ」の科学的な仕組みだ!
  • 【写真を見る】これが「フェイスフラッシュ」の科学的な仕組みだ!

なるほど、気高く成長したキン肉マンは、それだけの光を放ってシーソーを曲げたに違いない……。

って、ちょっと待て!

太陽の29万倍の光なんか放ってしまったら、シーソーも曲がるだろうけど、テリーマンやキング・ザ・100tや観客たちも無事では済むまい!

いや、それ以前に、試合会場そのものが発火炎上だあ!

すごいコトができるようになったがゆえに、災いをもたらすかもしれないキン肉マン。

立派なヒトになるのも、考えものですなあ。

【週刊ジョージア】

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著/柳田理科雄(やなぎた・りかお)●空想科学研究所主任研究員。代表作に「空想科学読本」シリーズ。また、各地での講演、ラジオ・TV番組への出演なども精力的に行っている。

関連書籍/「空想科学読本」(KADOKAWA)●漫画やアニメの世界の出来事を科学的に検証するベストセラーシリーズ。17弾は「絶対にやりたくない無謀な特訓ランキング」「とんでもないお金持ちランキング」など。予想もしなかった爆笑の結論が続々!

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