OGRE YOU ASSHOLE「何かが始まる前の雰囲気を形に」

ニューアルバム『ハンドルを放す前に』をリリースしたOGRE YOU ASSHOLEの出戸学(左)と馬渕啓(右)
  • ニューアルバム『ハンドルを放す前に』をリリースしたOGRE YOU ASSHOLEの出戸学(左)と馬渕啓(右)

OGRE YOU ASSHOLEが、2年ぶりとなるアルバム『ハンドルを放す前に』を11月9日にリリース。それを受けて、メンバーの出戸学(Vo./Gt.)と馬渕啓(Gt.)にインタビューを敢行。久々のセルフプロデュースとなった新作について語ってもらった。

――オリジナルアルバムとしては2年ぶりとなりますが、今回のアルバム制作が動き出されたのはいつ頃だったのでしょうか?

馬渕:曲作りなどが始まったのは去年の6月くらいですね。レコーディングに入っていたのが、ことしの6月から9月までで、3カ月くらいやりました。

――今回は制作期間が過去最長だったということですが、普段はどのくらいのスパンで曲作りやレコーディングなどを進めているんでしょうか?

出戸:今回はレコーディング期間が今までで一番長くて。レコーディングはいつも1カ月半くらいで仕上げていたのが、今回は3カ月くらいかかったっていうのが、(制作期間が)長かったところですね。

その中で一番時間をかけたのは…音色ですかね。(レコーディングの最後に行う)ミックスの時には個々の音はあまりいじらないで、録音する時にその場で音色を一個一個決めていったので、それがなかなか大変でしたね。「とりあえずOK」っていうことがなかったので。

――前作の『ペーパークラフト』では、「ミニマル・メロウ」をコンセプトとして制作されたとのことですが、本作を制作するに当たって全体的なコンセプトというのは決められていたんでしょうか?

出戸:今回はコンセプトを特に決めずに、とりあえず1つ1つ曲を作っていった感じですね。でも、その1つ1つ作っていった中でも、最後に全部の曲がそろった時に、全体を通した雰囲気みたいなものは自分なりに見つけたので、それをアルバムのタイトルにした感じです。

――今、タイトルのお話がありましたが、さまざまな楽曲がある中で今回「ハンドルを放す前に」という曲をそのままアルバムのタイトルにされた理由は?

出戸:自分で聞き返してみた時に、全体を通して「何かが始まる前」とか、「何かを放棄する前」とか、そういう何かが起こるちょっと前の部分を歌っている曲が多くて。「ハンドルを放す前に」もそうなんですけど、その雰囲気がアルバム全体を通してあったのでこのタイトルにしました。

――本作は1stアルバム以来となる“セルフプロデュース作品”とのことですが、前作まで長きにわたってプロデュースを務めてこられた石原洋さんの手を離れて、自分たちだけでやろうと思われたきっかけや経緯は、どのようなことだったのでしょうか?

馬渕:『Homely』『100年後』『ペーパークラフト』という3作が、自分たちの中では三部作となっていたんですけど、それを終えて1つやりきった感があったんです。

それからまた曲作りを始めて。その時点では石原さんとやるかやらないかということは特に決めずにやってたんですけど、徐々に「そろそろ自分たちで全部やってみたい」っていう気持ちが出てきたので、今回は自分たちでやることにしました。

――作品をリリースされるごとに、サウンドが「ミニマル」になったというか、無駄をそぎ落としたような楽曲が増えてきているようにも感じたのですが、曲作りの中で「よりシンプルに」といった意識は、皆さんの中で共有して持たれているのでしょうか?

馬渕:そうですね、自分が聴く音楽もそういう質感のものが好きなので。今回、曲は僕と出戸が一緒に作っているんですけど、2人の間ではそういう意識があったという感じですね。

――近年は「フェス受けする音楽」として、四つ打ちを基調とするようなダンサブルなサウンドが日本のみならず世界的にロックのトレンドのようになっているようにも思いますが、そうした流れに対する意識などはありますか?

出戸:アルバムを制作する時は、結構そういうこととは分けてやってますね。ライブや、それこそフェスとなると、その都度アレンジとかも考えますけど、アルバムはそういう「フェス受け」することなどは考えずに作っています。

――今作の中でも、「かんたんな自由」や「頭の体操」などは、緩いビートでありながらも踊れる感じのサウンドになっているようにも思いましたが、楽曲制作の中でリズムに対する意識は何かありましたか?

出戸:どの曲も「踊れる感じ」っていうのはあったらいいなとは思いますけど、フェスのような場ではなくて、「ひっそりと部屋で音楽聞いて踊っている感じ」であるとか、そういうグルーヴ感というのはレコーディングしている時も意識している部分はありますね。

――今作を聞いていて、具体的な情景というよりも雰囲気やイメージを喚起させる言葉を選ばれているような印象を受けましたが、歌詞を作られる際の言葉選びの面で重視しているのはどんなことでしょうか?

出戸:今までは確かに、歌詞の1行目と2行目に距離があって、その行間でクエスチョンマークが出て、そこで想像させる、というような書き方を結構やっていたんですが、今作の「頭の体操」や「移住計画」では、自分としては本当に新しい詞の書き方をしていて。

行間が全くなくて、ただひたすら頭の体操のことを歌ったり、ただ移住計画のことを何の感情もなく説明してるっていう感じの歌詞の書き方で。

行間にクエスチョンマークが出ないんですけど、「何でこんなことを歌っているんだ」っていう、もっと大きなクエスチョンマークが出てくるっていうことは、今回歌詞を書く中で意識していて。そういう書き方は新しくチャレンジした感じですね。

――皆さんは長野を拠点として活動をされていますが、場所に対するこだわり、またその利点などはどういった部分なのでしょうか?

出戸:制作する上では、他にいろんな誘惑がないので、制作に集中できるっていう利点はありますね。ただ、本当に周りに何もないんで(笑)。

知り合いが来たら「よくこんなとこで気が狂わずに1人でやってられるね」って言われるくらい何もない所なんです。そういう感じは、利点ではなくてむしろデメリットとしてもありますね。

――日々の生活の中で、音楽にしっかりと向き合っている時間は、割合で言うとどのくらいなのでしょうか?

出戸:週に2回くらいバンドの練習があって、ライブが月に2~3本入る感じで、あとはおのおのの作業っていう形で。結構思い付いた時に曲を作っているって感じですね。

――日本のヒップホップシーンでは、地元にとどまり土地やコミュニティーとの関わりが反映された作品を生み出すことがスタンダードになっていますが、ロックシーンではそういった動きはあまり見られないようにも思います。皆さんの中で、「長野のシーン」に対する特有の意識などはありますか?

出戸:いや、僕らはそういう、いわゆるヒップホップの感じとは全く違って。住んでいる場所が山なので、シーンも何もないですし、自分たちの練習するスタジオが森の中にポツンとあって、そこで週に2回みんなで集まってるっていうくらいで。

長野のバンドの知り合いも少しはいますけど、今やっている音楽で絡んでいる感じはないですね。なので、その土地の空気感を反映させたりっていうことも全くないですね。

――今回のアルバムは、ジャケットも出戸さんが手掛けてらっしゃるとのことですが、制作するに当たって意識したイメージなどはあったんでしょうか?

出戸:何かが起こるちょっと前の感じというか。例えば注射器で打たれる前の、打たれた瞬間よりその手前で感じる怖さだったり、遠足の前日の方がワクワクしたりとか、そういう感じのニュアンスが欲しくて。

アルバム全体通じてもそれがあると思うんですけど、それを『ハンドルを放す前に』というタイトルに合わせて絵で描こうとした時に、何がいいかなと考えていて。

そう思った時に、あんまり人は(絵の中に)出したくなかったので、「飛び込む直前」というか、「これから飛び込むであろうもの」というイメージで、飛び込み台の絵を描きました。

――絵の中に人を出したくなかった理由はどんなところですか?

出戸:アルバム自体も、僕のボーカルはもちろん人ですし、演奏も全部メンバーがやってるんですけど、全体的にバンドの顔が見えない感じがありますし、(絵の中に人が入っていない方が)アルバムの雰囲気とも合っているかなっていうのがありました。

――こうしたジャケットを制作する上で、影響を受けた作品やアーティストなどはありますか?

書いている時はあまり気付かなかったんですけど、「(ドイツのロックバンド)ClusterのCDのジャケットに似てる」って言われて「あ、確かに!」って思いましたね。

実は当初色も付けていたんですけど、下書きの時点で「あ、いいの出来そうだな」と思っていたら、色を塗った瞬間に何か全然違ったものになったので、もう1回描き直しました。

――サイケでミニマルなサウンドの特徴や、プロデューサーの石原さん、エンジニアの中村宗一郎さんというコンビとアルバムを制作されてきたこともあってか、しばしば「ゆらゆら帝国」の名前を引き合いに出されて語られることもありますが、そうした言及に対する意識などはありますか?

出戸:プロデューサーとエンジニアが一緒でしたし、レコーディングスタジオも一緒なので、引き合いに出して語られやすいですよね。他にもフィッシュマンズやNEU!、ピンク・フロイドとかと比べられた記憶があります。どれも好きな感じなのでうれしいですけど。

――11月下旬から'17年2月にかけてツアーも予定されていますが、ライブに向けて今作をどのように再構築していくのか、現時点で考えているアイデアなどあればお聞かせください。

出戸:大体ライブの方が派手にとか、エフェクティブな方向でアレンジすることが多いんですけど、今回は割とドラムが抑圧された感じの、手足を縛られてたたいているような感じの雰囲気もあるので、そういう部分をライブでもちょっと出してみたら面白いかなと。

実際それで保つのかは分からないですけど、ドラムの勝浦(隆嗣)さんの手足を縛ってたたいてもらうとか(笑)、アルバムよりも地味にしたパートとかを作ってみたらどうなのかっていうのは、ちょっとトライしてみたいですね。まだやってないのでどうなるかは分からないですが。

――それでは最後に、アルバムを聴かれる方にメッセージをお願いいたします。

出戸:本当に1つ1つ音色をこだわって、自分たちの好きな質感のアルバムが出来たと思うので、ぜひ聴いてもらいたいです。よろしくお願いします!

OGRE YOU ASSHOLE『ハンドルを放す前に』
発売中
2808円(税込)

【収録曲】
1.ハンドルを放す前に
2.かんたんな自由
3.なくした
4.あの気分でもう一度
5.頭の体操
6.寝つけない
7.はじまりの感じ
8.ムードに
9.移住計画
10.もしあったなら

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