“大人+子どもの食物語”は間違いなく面白い!『東京のらぼう!』『であいもん』

『東京のらぼう!』(関口太郎/KADOKAWA)
  • 『東京のらぼう!』(関口太郎/KADOKAWA)

 大人と子どもの物語に、美味しい物が加わると面白い。そんな“大人+子どもの食物語”という新ジャンルができつつあるのかもしれない。すでに話題なのが、男やもめの数学教師が幼い娘のために料理に奮闘する『甘々と稲妻』(雨隠ギド/講談社)。そして、郷里に帰った男子が両親の残したうどん屋で男の子に出会う『うどんの国の金色手鞠』(篠丸のどか/新潮社)。両作品ともアニメ化され、大人+子どもの“ザ・不器用”な組み合わせが、一緒に美味しい物を食べることで心を通わせる物語だ。

 そこにまた新たに注目の作品が登場した。『ヤングエース』で連載中の『東京のらぼう!』(関口太郎/KADOKAWA)は、都市部から郊外へ移住して13年のまんが家・とうたんとその妻、そして3人の愛娘たちとのカントリーライフが描かれている。

 作者によって“だいたい実話”と明かされたこの作品の舞台は東京都あきる野市。秋川マス釣り場や日本山岳耐久レースなど、実在する場所やイベントが丁寧な絵柄でリアルに描写されているのも見どころのひとつだ。川遊び、家庭菜園、ホタル狩りと、田舎のアクティビティを全力で堪能する様は、とうたん含めて子供が4人居るのか!?と錯覚させるようなはしゃぎっぷり。むしろ、都会の若者と川で火起こしの速さを競って、長女に「子供だなー」とツッコまれるとうたんが一番子供かもしれない。

 そして、父・とうたんの最大の見せ場、料理!……なのだが、とうたんがはりきって作るニジマスの燻製やイノシシ肉のBBQなど、野性味溢れる天然食材と調理は、娘たちには少々ハードルが高く、受け入れられたりノーサンキューだったり。

 一方で、「父親と一緒に川で泳いでるとこ見られたらなんて言われるか」などと言ってとうたんの誘いを断るようになった思春期の長女は、食の好みが逆に大人のとうたんに近づいている様子。彼女たちが成長するにつれ、こういった父娘の交流もまれになっていくのかもしれない…と思うのは切ないが、娘たちとのあらゆるシーンをこうしてまんがとして残せることは、とうたんのまんが家冥利に尽きるのではないかと思う。

 もうひとつ紹介したい“大人+子どもの食物語”として、同じく『ヤングエース』で連載中の『であいもん』(浅野りん/KADOKAWA)がある。

 東京でミュージシャンを目指していた30歳の和(なごむ)が、彼女と別れ、京都にある実家の和菓子屋・緑松を継ぐ決意をして10年ぶりに出戻ってみると、そこには父親に捨てられた少女・一果(いつか)が跡継ぎとして受け入れられていた。

 母親に、一果の父親代わりを命じられた和だが、夢のために実家を捨てたと思われている和は、自立心が強く真面目な性格の一果の反感を買っていて、全く心を開いてもらえない。かつて和が和菓子屋を継ぐのを諦め、京都を出たのには理由があるのだが──

 頑固オヤジを絵に描いたような父親は一果には骨抜き状態で、一果に店を継がせるという。息子を叱咤する母親や、意外な特技(?)を持つ従業員たちにも囲まれ、和は一果に不器用ながらもまっすぐな親睦を試みる。和菓子と京都の街を通して、30歳にもなるオッサンが、血の繋がらない少女と気持ちを通わせようと四苦八苦する姿が面白い。

 和菓子屋が舞台なだけあって、菜の花きんとんやカエデといった、お茶の席に出されるような見目麗しい和菓子をはじめ、京都では土用に食べるあんころ餅、下鴨神社が発祥といわれているみたらし団子……等々、京都ならではの季節を感じられる和菓子が登場。また上の『東京のらぼう!』同様、大原三千院、祇園祭の宵々山など、実在する場所やイベントも堪能できる。

 両作品とも、12月に第1巻が発売されたばかり。不器用な大人+子どもの物語にほっこりしつつ、まんがに登場する聖地を訪れてみるのも楽しめそうな2冊だ。

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