超合理主義エリートサラリーマンが転生したのは、幼女!? 2017年1月よりTVアニメ放送『幼女戦記』がコミカライズ!

『幼女戦記』(東條 チカ、篠月しのぶ、カルロ・ゼン/KADOKAWA)
  • 『幼女戦記』(東條 チカ、篠月しのぶ、カルロ・ゼン/KADOKAWA)

 老若男女問わず、どんな人にだって、その人の人生がある。皆、自分の人生を少しでも幸せに生きたいと願っている。しかしすべての人が同じように平等に恩恵を受けることはできない。需要も供給も、限られた枠しか存在しないからだ。そして、その枠から外れる人間がいるからこそ、勝ち取った人間が評価され、「勝った」と思うことができる。誰かの成功は、誰かの犠牲の上に成り立っているのだ。来年1月からのアニメ化が決定している『幼女戦記』(東條 チカ、篠月しのぶ、カルロ・ゼン/KADOKAWA)も、そんな世の中の残酷さを描いた作品だ。原作は小説だが、コミカライズ版も12月10日(土)に第1巻が、12月26日(月)に第2巻が発売、電子版も同日配信された。

 2013年2月22日、東京でサラリーマンをしていた主人公。彼の主な仕事は、人の首を切ることだった。一部の天才や秀才には敵わないが、次期部長への道もほぼ確定しており、彼の人生は順風満帆であるかのように思えた。しかし彼にリストラされた社員からの逆恨みで、駅のホームから突き落とされ、彼の人生はあっけなく幕を閉じる。

 死んだ先で、彼は「創造主」だと名乗る神に出会った。しかし現実的で合理的な彼はそれを信じようとせず、挙句相手を悪魔呼ばわり。神相手に、自分は恵まれており、社会的にも優位で「神にすがる理由がありません」と淡々と持論を展開してしまう。結果怒りを買い、彼は「非科学的な世界で 女に生まれ 戦争を知り 追いつめられるがよい!!!」と魔法の世界に幼女として転生させられてしまった――。

 転生先での“彼女”は、捨て子で孤児。ターニャ・デグレチャフと名付けられ、教会で育てられた。彼女は魔法の才能に恵まれたことで、帝国航空魔導士として最前線で戦争をすることになってしまった。この当時ターニャは9歳だが、サラリーマン時代の記憶は消えておらず、性格も当時のまま。彼女はその淡々とのし上がる策略に優れた頭で、周囲の信頼を勝ち取り、着実に出世コースを歩んでいく。

 しかし、自分たちの存在を認めさせようとする神からの介入により、ターニャにいくつもの計算外の試練がふりかかる。神を信仰どころか信じてすらいない、むしろ「存在X」「悪魔」などと呼び嫌厭しているターニャだが、自分の意志に反して神に振り回されていく。そんな彼女の、神への辛辣な胸中が度々書かれているのだが、神様相手の言葉とは思えないほど鋭く、それが逆に面白い。抗えないと感じながらも抜け道を探そうとするその心意気は、サラリーマン時代に経験した板挟みや苦労の賜物なのだろう。自分にとっての最善をいこうとするターニャは、見方によってはずる賢く自分勝手と取れなくもないが、しかしこれは、誰もが持ち合わせているものでもある。

 サラリーマンだろうが魔法が使える幼女だろうが、その前に1人の人間だ。彼女を突き動かす感情は、生き物の根底にある「生き抜きたい」という本能なのだ。人間らしくないようで、実はとても人間らしいのが、ターニャなのだ。ターニャは、この神に送り込まれた世界で、自分が持って生まれた能力をフル活用して戦っていく。結局のところ、だからサラリーマン時代ものし上がることができたのかもしれない。

 そう考えると、理不尽な行動をとったのはリストラした彼なのか、リストラされ逆恨みした男なのか、どちらだったのか分からなくなってくる。本書を読んでいると、そんな「何が正しいのか」ということを考えずにはいられなかった。アニメの放送開始まであと少し。まだ本作を知らない人は、ぜひこの機会に読んで、思いを巡らせてみてほしい。

文=月乃雫

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