ASKAも酒井法子も…なぜカップルで逮捕されるのか? 代償が大きすぎる薬物使用の酷さ

『薬物とセックス』(溝口敦/新潮社)
  • 『薬物とセックス』(溝口敦/新潮社)

 違法薬物で逮捕・起訴された有名人は多い。最近ではASKAや清原和博、その他にも押尾学や小向美奈子など、芸能人の薬物がらみの事件は後を絶たない。またインターネットの普及により、昔に比べ薬物の入手が容易になってしまった。薬物の危険性は、私たちが思っているよりもずっと身近にあるのだ。『薬物とセックス』(溝口敦/新潮社)では、薬物とセックスの関連性を指摘し、覚醒剤をはじめとする薬物の恐ろしさを説いている。

 本書では、溝口氏があらゆる方面から薬物とセックスに関する証言やデータを集め、身の毛もよだつ実態を紹介し、溝口氏が考察している。紹介されている証言の1つが、アルコール依存症や薬物乱用の治療リハビリで定評のある「赤城高原ホスピタル」。その病院のホームページに「薬物乱用、依存症、200人の証言」という掲示がある。2000年当時、25歳だった女性が覚醒剤についてこう証言している。要約して載せたい。

 警察は性感が良くなることを否定していますし、マスコミは興味をあおるからという理由で取り上げませんけれど、シャブとセックスはワンセットでした。膣に入れたり、ペニスにふりかけたりします。気持ちいいですよ。やめられなくなるという人もいますね。

 2003年当時、25歳だった女性はこのようにも証言している。

 ポンプ(静脈注射)をやると、体中が性感帯になった気がしました。髪にそっと触れられただけで鳥肌が立ちました。全身が1つの大きな性器になったんだと思いました。自分はもう人間じゃない、と思いました。自分は化け物になった。これはだめだ。それが治療につながるきっかけになりました。

 この他にも、薬物を使ってセックスをした経験者の様々な証言が載せられていた。特に、覚醒剤を使用してからセックスをすると気持ち良くなるのは間違いないらしい。

 有名人が薬物で逮捕されるとき、確かにカップルと一緒に逮捕されていることが多かった。MDMAの使用で押尾学が逮捕されたのは、ホテルで性交中に薬物の使用によって女性を死なせたことだ。ASKAは覚醒剤の使用で、10年来の愛人と一緒に逮捕された。酒井法子とプロサーファーの高相祐一も、2009年8月に逮捕されている。

 この他にも、田代まさし、小向美奈子、元「光GENJI」の赤坂晃など、カップルで一緒に逮捕された有名人は数多くのぼる。薬物とセックスの関係は間違いないのだろう。

 しかしその反面、薬物を使用した代償はあまりに大きい。本書では、薬物を使用した経緯をブログに載せたASKAの手記を紹介している。その一部を要約しながら紹介したい。

 1996年頃、ロンドンでMDMAを手に入れ、初めて薬物を使用してしまったASKA。それから度々違法薬物を使用するようになり、2007年の夏頃、使用頻度が増えてきたASKAに、ついに異変が表れる。ASKAの友達が「集団盗聴盗撮」や「ネットストーカー」に怯え、自ら命を絶ってしまった。ASKAは亡き友達を死に追いやった犯人を突き止めようと、パソコンの前に居座り続けた。そしてある日、ネットサーフィンをしていたら、ASKAがその日に電話でしゃべったことや行動に酷似したことが、克明に書かれていた。毎日それは続いた。電話の内容などは、すぐに書き込まれていく。偶然とは思えない。

 これは、薬物使用による幻覚妄想状態だ。「常に誰かに狙われている」「監視されている」という被害妄想が出現し、妄想型統合失調症に近い状態になる。さらに続けよう。

 ASKAが携帯電話に向かって「おまえらいい加減にしろ!何が楽しいんだ!」と怒鳴ると、「さあ、今日はなんと神のお声を頂きました」とネットに書いてく始末。しばらくして、ASKAは部屋の大改造を思いきる。さらに西新宿でマンションの一室も借りた。しかし西新宿のマンションでも盗撮や盗聴を感じる。

 そしてある日、ある男から覚醒剤を受け取り、試してみた。覚醒剤はこのときが初めてだった。使用すると、目が覚めるような感覚を得た。その夜は、盗聴犯盗撮犯を朝までネットサーフィンで追った。翌々日、体に異変が起きた。朝から体がだるい。じっとりした汗をかいてくる。横になったまま、何もする気が起きない。気がつけば、ストンと落ちている。眠くて、眠くて辛い。耐えられないだるさだった。

 耐性がつくのが恐ろしく早い。私はすでに三週間も使用してしまった。何と言っても、薬の切れ目にやってくるあのだるさが恐怖なのだ。

 ASKAの手記と薬物の恐ろしさはこの程度にしておこう。本書を読む限り「覚醒剤やめますか、それとも人間やめますか」というフレーズは、まさに真実を語る至言だ。内容や言葉が強烈すぎて、書くのをはばかられた記述もある。昨今の薬物事情を考えると、全ての人が本書を手にとり、薬物の恐ろしさに震え上がっておくべきだ。「赤城高原ホスピタル」の掲示に載っている女性の証言の通り、薬物使用でセックスは気持ち良くなるかもしれないが、人間をやめて化け物になるのは、どうも代償が大きすぎる。

文=いのうえゆきひろ

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