罪と罰のバランスはこれでよいのか?『さまよう刃』に込めた寺尾聰の思い

少年犯罪で娘を失った父・長峰重樹を演じた寺尾聰
  • 少年犯罪で娘を失った父・長峰重樹を演じた寺尾聰

10月10日(土)、川崎チネチッタにて映画『さまよう刃』の初日舞台挨拶が行われ、主演の寺尾聰が登壇した。

東野圭吾のベストセラーを映画化した『さまよう刃』は、最愛の娘を未成年の少年たちに陵辱され殺された父親が、罪の重さと犯人を裁く「少年法」の間に懸隔を感じ、自らの手で裁きを下そうと少年たちを追い詰めるという、被害者遺族の立場から少年犯罪の現実を描いた衝撃作だ。

本作に出演しようと思ったきっかけは、1999年の「光市母子殺害事件」を含む2つの事件にあると、寺尾は話す。

「奥様と自分の赤ちゃんを未成年者に殺された本村さんの事件があって、こんなこと許されないっていう怒りが湧き起こりました。僕らが想像できないくらいの怒りと悲しみを抱えていながらも、その記者会見の席で、冷静に受け答えをしている僕よりも全然若い彼を見て、本当に涙や悲しみを胸にしまい込むというのは大変なことなんだなと…。それで、この話をいただいたときに、そういう視点からもこの映画をアプローチしてみたいなと思いました。もうひとつは、もう少し前の事件なんですけど、ある老人が自分の最愛の旦那様と息子さんを男に殺されて、『死刑を望まない』って言ったんですね。それをテレビで見てて、え?なんでだろって思ったら、『自分の世界中で一番愛していた旦那と息子が別の世界に行ってしまった、だから、その犯人も死刑にして同じ世界にやりたくない』そう言ったんです。その言葉を聞いたときに、本村さんのインタビューの答えとまた違った意味で胸に刺さる思いがありました」

胸に手を当てながら、被害者遺族を悼むように話し続ける寺尾聰は、本作で演じた被害者の父親・長峰重樹の心情をこう語った。

「今回長峰という父親は、最初の共犯の少年に出会ってすぐ殺めてしまうんですね。それから、ほとんど言葉を発さず、歩き回って何をさまよっていたかというと、最後の最後に主犯の少年にたどり着くまでに答えが変わってくるんです。そんなに簡単に楽になっていいのかっていう気持ちと、少年法で彼らが残るにしても、もう一度いろんなことを考えさせる、それもただ考えさせるだけでなくて、死刑よりももっと、命を取るよりももっと重いものを背中に背負わせる。それがひとつのこの父親の答えだったんじゃないかなと思います」

「少年法」という法律で守られ、犯した罪の重さに見合わない判決が下されることがしばしばある少年犯罪。ひとりの父親として、本作に込めた思いを語る寺尾は、「今、僕も子供や孫を持つひとりの父親です。少年法も含めて、この時代、次の世代、またその次の世代を考えたときに、日本の“罪と罰のバランス”ってこれでいいんだろうか?っていう思いがあります。みなさんが帰りながら『自分だったらどうだろう』とか、『私はこう思う』と考えることのひとつであってくれれば、この映画は大成功だと思います」と、舞台挨拶を締めくくった。

単なる怒りや悲しみや空しさだけでなく、観る者の胸に重たい何かを残していく映画『さまよう刃』。この週末は、寺尾の言葉を胸に、劇場に足を運んでほしい。【MovieWalker/渡部晃子】

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